JASDAQ上場企業であるシノケングループは、頭金ゼロでも始められるアパート・マンション経営事業の勧誘などを行なっており、シノケンハーモニー、シノケンファシリティーズ、シノケンプロデュースなど現時点で12のグループ会社を抱えています。シノケンのアパート経営は安全で優良な投資なのか、物件にはどんな特徴があるのか、失敗したという口コミはあるのかなど、多方面から検証してみようと思います。
- シノケングループの事業内容
- シノケンのアパート投資の特徴
- 家賃保証会社のサービスも提供
- 失敗ゼロ? 販売した約3,500棟の物件で経営破綻が無い
- 頭金ゼロで始められるアパート投資の実態
- 営業方針と評判・口コミ|不動産投資で失敗しないためには?
- TATERUとの比較
- 21世紀の日本における不動産投資リスク
- 今後値上がりする不動産と値下がりする不動産
- 団体信用生命保険について
- ウィズリコースローンの注意点
- サブリースの問題点
シノケングループの事業内容
シノケングループは、株式会社シノハラ建設システムとして1990年に設立された会社で、30年近くの歴史があります。事業内容は不動産販売事業、不動産管理関連事業、ゼネコン事業、エネルギー事業、介護事業、海外での不動産事業と多岐に渡っています。
最近は
土地がなくても、自己資金が少なくてもアパート経営はできる
をキャッチコピーに、不動産のオーナー勧誘を積極的に行なっており、「大家になって不労所得」を夢見る人からの関心が高まっています。
▼シノケン関連情報外部リンク
・(株)シノケングループ【8909】:株式/株価 - Yahoo!ファイナンス
シノケンのアパート投資の特徴
以下に、シノケングループが扱うアパートの特徴を挙げていきます。なお、内容についてはFISCOのシノケングループに関する企業調査レポート(2017年9月発行)を参考にしております。
立地:都市部では駅から徒歩10分以内など、好立地
間取り:単身世帯、DINKs(子どもを持たない夫婦)向けの間取り(2LDKなど)
入居率:98パーセント(2017年6月時点)
デザイン性:若者ウケの良いデザイン性に優れた物件
これらがシノケングループが供給するアパート物件の特徴で、FISCOのレポートでも市場評価が高いことが分析されています。実際に福岡県西区でシノケンのアパートを所有している方のブログを見ると、2012年から2017年の実績を集計すると入居率98%が達成されていました。ただし、実際のシノケンが発表している統計は「●ヶ月以内に次の入居者が決定すれば空室としてカウントしない」という条件で発表されている可能性はあります(発表されている入居率の基準が詳細に確認できる資料は見つかりませんでした)。
参考:シノケンと三和エステートの入居率実績を公開90%以上の入居率は本当か? | 成功の投資スキーム
家賃保証会社のサービスも提供
大家として賃貸物件の経営を行う場合には、家賃の滞納に備えて保証会社との契約を行うことで入居者から直接取り立てをする必要が無くなります。シノケンの場合は、グループ会社のシノケンコミュニケーションズが家賃の保証会社として月ごとに代位弁済を行なってくれる仕組みを設けています。グループ会社がこのような仕組みを整えている点は、煩雑な事務作業の軽減などの観点から評価できると思います。
失敗ゼロ? 販売した約3,500棟の物件で経営破綻が無い
シノケンのアパート経営を分析する際に一番魅力的に写るのが、「これまで同社が販売してきた物件での経営破綻が無い」という事実です。
バブル崩壊以後の低金利が購入者にとって有利に働いた側面が大きいのに加えて、立地やデザイン性の良さと単身・DINKs世帯向けの物件を供給することで、21世紀になって加速してきた核家族化にfixできたこと、また、評価額の低い狭小地や変形地を有効活用するプランニング力、大手ハウスメーカーに比べて建設コストが抑えられるため、家賃設定でも優位に立てるといった、緻密な戦略が確かな実績となっている印象を受けます。
頭金ゼロで始められるアパート投資の実態
シノケンがアパート経営投資を勧める中で「頭金がゼロでも始められる」というものがありますが、なぜそれが可能なのかといったバックグラウンドも見て行きます。ただし大前提として、金融機関からお金を借り入れてシノケンの物件を買い取り、それを賃貸物件として貸し出すといった側面を踏まえると、金利が発生する以上は頭金は用意した方が無理なく経営することが可能だという点は押さえておきましょう。
それでも、居住用の住宅ローンに比べてアパートローンについては、借り手(オーナー・出資者)の信用力のみならず、販売会社の実績も金融機関が審査項目として重視するようになっているようで、こうした背景もシノケンのアパート経営投資が頭金ゼロでも始められるということに繋がっています。
つまり、前述の通りシノケンの販売してきたアパートにはその後の経営でも成功しているという実績があるため、金融機関としてもそのためにお金を借りたいという人に対しての融資のハードルが下がるということですね。
あくまでも一例ではありますが、現在では年収500万円程度あれば頭金無しの全額ローンで、金利1パーセント台の35年ローンを組むことも可能なようです。シノケンと同じように投資物件の案内を行なっているリノシーでは、「年収500万円のサラリーマン」にターゲットを絞って事業が展開されていたりします。
営業方針と評判・口コミ|不動産投資で失敗しないためには?
「不動産投資」と聞くと、知らない電話番号からいきなり電話がきて「投資目的でマンションを買ってみませんか?」といった胡散臭い営業を思い浮かべる人もいるかもしれません。シノケンは飛び込みやDM、テレアポなどによる営業は行なっておらず、広告などを介して問い合わせがあった顧客に対して営業を行なっているのが特徴です。既にオーナーとして物件を所有している人からの紹介で興味を持つという人も多いようです。
不動産投資では昔から悪質な詐欺まがいの物件を売りつけられたといった失敗談もよく聞きますし、最近ではスルガ銀行が不正に融資を行なっていたニュースに関連して、投資目的で不動産を購入しようとした人たちの「失敗した」という声もよく耳にします。シノケンに関しては悪い評判が全くない訳ではありませんが、元々の物件の競争力が高いことに加えて、こうした営業方針も相まって良い評判・口コミが多い印象を受けます。
このように書いていますが、この記事を含めてネットや新聞、TVの情報、あるいは営業マンのセールストークや知人の体験談を100パーセント信じて不動産投資を行うのは危険です(不動産投資だけに限りませんが)。自分の資金と、想定利回り、そしてそれが本当に実現・持続可能かどうかというところを、自分でしっかり検証することを怠らないことが、不動産投資で失敗しないようにするためには必要です。
TATERUとの比較
当社ビジネスモデルについて
同業他社の一部報道に関連し、「頭金ゼロでもアパート経営はできる」をスローガンとした、当社グループの投資用不動産のビジネスモデルに関し、多くのお問合せを頂いております。その中には、あたかも当社グループが不正行為を行っているかのような事実誤認とも取れる内容もございま
すので、下記の通り、ご説明申し上げます。
投資用アパート経営のビジネスモデルは、平成2年6月設立の当社創業のビジネスモデルであり、当社グループは、お客様の資産形成を目的としたビジネスモデルを探求し続けて参りました。
「頭金ゼロでもできるアパート経営」スキームは、創業以来 28 年間の実績により培われた信頼に基づく複数の金融機関様との独占提携、そして、過去物件を含めた 98%以上の高い平均入居率等々、創業以来のトラックレコードと蓄積されたノウハウにより、取引先各位のご理解・ご協力を得て実現できた当社独自のビジネスモデルであり、不正行為を行っているものではございません。
当社としましては、従来通り変わらずコンプライアンスの遵守に努めつつ、お客様の資産形成を目的としたアパート経営を提案して参る所存でございますので、引き続きのご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
少ない資金での不動産投資と言えば、スルガ銀行と「かぼちゃの馬車」の一件や、TATERUを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。上記のプレスリリースはTATERUの不祥事が明るみになった際にシノケンにも疑惑の目が向けられる記事が週刊新潮から出た際に発表されたものです。
顧客の預金残高を改ざんして銀行から融資をしてもらえるように不正を行なっていたのがTATERUですが、シノケングループのアパート経営に関しては、そもそも頭金無しでローンを通せる不動産販売事業者としての信頼もあることから、TATERUのような不正が行われることは無いように思えます。
また、TATERUは顧客が直接物件を購入してオーナーになる純粋な不動産投資とは異なり、不動産特定共同事業というスキームを利用して小口の顧客に販売される投資信託のような側面がありました。「TATERUもやらかしたし次はシノケンでは」という声も一部ではあるようですが、個人的には「低資金からの不動産投資」という大きなテーマの部分以外は本質が異なっていると感じます。
ただし、「利用者側にローンを組ませて賃貸物件を経営させる」というビジネスモデルの不安定さは今後さらに顕著になると思われますし、シノケンの物件で経営破綻するものも出てくる可能性は十分あるでしょう。そうなった場合にはオーナーからは「詐欺だ」と言われる可能性のある営業形態になっていると感じます。
TATERUと同じ不動産特定共同事業の仕組みを利用しているものに「みんなで大家さん」のファンド商品がありますが、こちらに関しては問題点などを下記記事で詳しく紹介しています。
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21世紀の日本における不動産投資リスク
これは周知の事実ですが、現在日本は少子高齢化と人口減少の波が押し寄せてきている最中です。この波が与える不動産業界への影響は、これから不動産の売り手過多という形で顕著になると思われます。「買い手・借り手がどんどん少なくなる」という流れには、どんなに優良な物件でも影響は受けるでしょう。
海外からの移民・出稼ぎ労働者向けの営業や訪日観光客への民泊施設としての提供など、柔軟な姿勢で営業・管理に臨まなければ、今後の日本の不動産事業・不動産投資はかなり苦戦するものと思われます。こうしたトレンドはシノケンのアパート経営投資においても同様に、念頭に置くべき事項でしょう。
今後値上がりする不動産と値下がりする不動産
日本の不動産の値段は、今後二極化がますます進んでいくことになります。日本全体を見ると中長期的に人口減少が訪れますが、一方で東京には人がより集まることが予測されています。
狙い目は東京のワンルーム?
現在でも投資用の物件として東京のワンルームマンションは多く扱われており、地方在住者がシノケンやリノシーといった業者を経由して投資を行うケースが多くあります。
キャピタルゲインを狙った投資の場合は、不動産価格の下落の影響を強く受けるなどリスクは想定できますが、ある程度の年数所有して家賃収入によるインカムゲインを狙うシノケンのようなモデルの場合は、入居者が集まると推測できる東京の物件に関しては今後さらなる需要が高まる可能性もあるため、狙い目だと言えるでしょう。
ワンルームマンションの規制
なぜ東京のワンルームマンションが狙いかと言うと、まず第一に大きい物件よりも値段が安いということに加えて、東京都の条例により、ワンルームマンションの新規の建設は難しくなっているという背景があります。
渋谷区の場合、新築の集合住宅を建てる場合の広さは、一戸あたり28㎡以上が必要で、他の区でも同じようにワンルームマンションを規制するような条例が敷かれ始めています。自治体としては、長く安定的に住んでくれる家族連れに入居してほしいというような思惑もあるのでしょう。
この流れが都内全域に広がれば、立地の良いワンルームマンションは、将来学生など単身生活をする人からの需要も想定できますので、空室リスクもある程度ヘッジできる可能性が高いです。この点を意識すると、中古マンションなどからお宝物件を見つけることもできるかもしれません。マンション投資で失敗したくない人もこの傾向を意識した上で投資対象の物件を絞るようにしてください。
団体信用生命保険について
直接的な家賃収入以外のメリットで言えば、シノケンのアパート投資をする際は、団体信用生命保険(団信)に加入することが可能で、この制度を利用することで不動産投資が生命保険の代わりになります。仕組みとしては、ローンを組んで投資をする人が事故や病気などで死亡、あるいは高度障害が残ってしまったケースでは、ローン残高を家族は払わずとも物件は相続できるというものです(ローンが保険料で完済できる)。
つまり、団体信用生命保険に加入しておけば、自分の身に万が一のことがあっても、購入した物件と家賃収入を家族は受け取ることができるのです。死亡保障付きの生命保険よりもこのような制度を利用できるのも、シノケンのアパート投資のメリットだと言えるでしょう。
ウィズリコースローンの注意点
シノケンの物件をローンを組んで購入する場合、ローンはウィズリコースローンの形態になります。これは住宅ローンなどと同じ仕組みなのですが、仕組みをきちんと理解しておかなければなりません。ウィズリコースローンでは、もしローンの返済が滞って物件が抵当に入ってしまったとき、ローン残高から物件の売却額を差し引いてもローンが残っているのであれば、その残高を返済する義務が生じます。
ウィズリコースローンに対して日本ではあまり一般的ではありませんが、ノンリコースローンという形態も存在します。住宅ローンの返済が滞った場合には物件を売却することで残高がゼロになるというものです。アメリカの住宅ローンは多くがこの形態です。
物件の借り手が少なくなってしまうと、抵当に入った際の評価額も購入金額から大きく目減りしてしまい、物件を手放してもローン残高は残ってしまうという可能性もあります。シノケンは銀行から借り入れをしやすいように便宜を図るため、ややオーバーローン気味でも審査が通ってしまう可能性も考えられます。シノケン側もビジネスですので購入を検討している人には上手いことを言うでしょうが、資料に書かれている「見込み」の運営が持続可能かどうかはしっかり検証を行わなければなりません。
サブリースの問題点
「サブリース」というシステムはご存知ですか? 近年、投資用マンションを売るためにこのシステムが悪用されている例が多くあり、シノケンもこのシステムを適用している事例があるため、この中身については確認しておいた方が良いでしょう。サブリースとは「家賃保証」のシステムでもあり、オーナーが物件を購入してから業者側がそれを借り上げるという形式を取り、一定期間は入居者が付かなくてもシノケンなどの仲介業者側が家賃相当分のお金をオーナーに支払って保証するという仕組みになっています。
スルガ銀行が不正融資をしていた問題でも、このサブリースを挟んでオーバーローンを組ませていたり、最近はその実態が表面化してきました。そもそものシステムとしては違法ではないのですが、これを悪用するブローカーが暗躍しており、スルガ銀行のような悪徳金融機関と結託して二重契約を結ばせて手数料を取っているサブリース業者が存在するのです。
この辺りは「家賃保証」などの表面的な謳い文句に騙されて契約してしまう人が一定数いるようで、業者の言われるがままに契約してしまって問題が発生するまで気がつかないというような人までいます。金融機関としては書類を偽造してまでお金を貸したいぐらいお金は余っているけど、物件の需要と供給はマッチしないから、「年収が低くても大家さんになれますよ」と年収が低い若い労働者層に不正融資を持ちかける事例がゴロゴロしているというわけですね。
金融機関だって勤め先と年齢を照らし合わせれば「明らかにおかしい貯金残高」はわかるはずなのに、会社ぐるみで不安定な層に無理やり不良債権を押し付けているというのが常態化しているというケイオスです。中には20年間家賃保証をしてもらえるというような案件もあるようですが、契約の実態はどうなっているのか、サブリースを解約する際には違約金を取られる契約になっているケースも多いようなので、悪徳な業者があるという前提で確認をしておかないと、最終的に自分だけが嵌め込まれて借金を抱えてバカを見てしまう可能性があります。
投資用不動産は、本当に儲かるのであれば業者が直営するケースがほとんどです。なぜ売りに出されるのか、なぜオーナーを募集しているのか、その辺りを検証できないと勉強代と割り切るのは到底難しい損失を被ってしまうことがありますので、十分注意してください。特に、各種保証の制度のデメリットと特約の部分はしっかり確認するようにしましょう。
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