「仮想通貨は2020年の東京オリンピックまでに上がる」という説は本当?

「仮想通貨(暗号通貨)は2020年の東京オリンピックの頃までにインフラ整備も本格的に整い、その頃には価格もまた高騰しているだろう」という説が、ツイッターなどを中心によく見られます。しかしそれらの説は何の根拠も示されず、希望的観測のみで語られているところもあるというのが冷静な判断だと思います。

 

中長期的な意味では、今年1月ごろからの「仮想通貨バブル崩壊」とも取れる価格の下落を加味したとしても「仮想通貨市場は今後も右肩上がりで成長していくだろう」という見方はできます。

 

しかし、東京オリンピックまでにビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)、リップルXRP)といった仮想通貨が世界中で決済手段としての地位を確固たるものにして需要も爆発的に伸びるかどうかはかなり微妙なところですし、これまでの仮想通貨の市場の拡大は「儲かる・儲かりそう」という投機的な需要による影響がほとんどであり、2020年にかけて急激に実需面での伸びが期待できるかと言えば、それらの言述はほとんど根拠の無い憶測でしか無いものです。

 

 

 

もともと2020年の東京オリンピックが仮想通貨の飛躍に繋がるという説に繋がったバックグラウンドとしては、オリンピックによる訪日客の増加の期待がありました。近年の政府の方針によって訪日観光客は過去最高水準で推移しており、それが「日本円以外の仮想通貨が使えれば訪日客にも便利だから、2020年の東京オリンピック(訪日観光客数のピーク時期)に向けて仮想通貨決済を導入する店舗も増えるだろう。」といった説を後押ししているように思えます。

 

しかし実際には、中国でのWechat payの普及・インフラ化をはじめ、キャッシュレス決済の拡大という面では世界的なムーブメントが起こっていることは事実ですが、仮想通貨が日常生活での買い物などに際する決済手段として好まれているか、それがワールドスタンダードかと言えば答えはもちろんNOですし、そうなる可能性も高いとは思えません。

 

日本でも仮想通貨が決済に使えるお店は増えつつありますが、広告・PR面を重視した社交辞令的な導入のレベルに留まっている感は否めません。クレジットカード・デビットカードは置いておいたとしても、ワンタッチで決済できるセブンイレブンnanacoやイオンのwaonといったデポジット型の決済の方が仮想通貨決済よりも利便性が高いことは言うまでも無いことですし、SuicaIcocaといった交通系カードも同じように利用できて使える場所も増えていますので、こうしたサービスが訪日外国人含めてより多くの利用者を獲得すると考える方が自然です。

 

このように、「2020年の東京オリンピックの頃に仮想通貨は需要が増えて値段も上がる」と言う説にはツッコミどころは満載なのです。

 

ただし、オリンピックに合わせて景気が加熱して再び仮想通貨にも資金が流入時価総額が大きくなり、話題性も相まって利用可能な場所がさらに増えていくと言う可能性はゼロではありません。ただしそれもあくまでも「決済手段としての仮想通貨の普及」と言う意味合いよりも「投機目的で買われているだけの電子ゴミが、申し訳程度ながらも実生活で使えるシーンが徐々に増えてくる」という意味合いが強いものであると予想します。