シニア世代に人気の「ゆる起業」とは?

日本テレビ系列の夕方のニュース番組で「ゆる起業」なる新しい起業のあり方が特集されていました.報道の中では「定年退職などで現役を退いたシニア世代が,新しく自分で事業を展開すること」として扱われていました.

 

大手物流企業を退職後に,大手では扱わない少量での取引を扱う会社を立ち上げた人や,新しく飲食店を経営した人がフィーチャーされていました.こうした定年退職後のシニア世代の起業を支援する会社として,銀座セカンドライフ株式会社さんが紹介されており,同社が開催するセミナーなどについても取り上げられていました.

 

報道の中でシニア起業のメリットとして挙げられていたのは「やりがい」「生きがい」というもの.特に男性の多くは定年までの生活の中心にあるのは仕事ですので,それが定年後にいきなりゼロになってしまうと,日常の時間,そして自分自身を持て余してしまうことも多いのだとか.これはまぁよく聞く話ですよね.

 

そこで「再就職」というのがこれまでのスタンダードだったのが,起業という道を選ぶシニア世代も多くなっているのが現状です.実際に、この20年ほどで60歳以上の起業家が全体の起業家に占める割合は2倍以上になっているのです*1

 

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先ほど名前を挙げ銀座セカンドライフ株式会社では,事業の規模やリスクを考慮して,そして本人の意向も踏まえた上でこうしたシニア世代の起業家の支援を行っているとのことでした.「それほど稼がなくてもいい」という起業希望者も多いため,無理な資金調達をすすめたりせず,自分ひとりでも扱える事業規模で,「利益」よりも「生きがい」を重視し,そのニーズを満たすための支援をしているというのが印象的でした.

 

こうした傾向は非常に良いものなのかなと個人的には思います(なんでも略称・俗称を付けたがるメディアによる「ゆる起業」という呼称はあまり好ましくないとは思いますが……).「一億総活躍社会」というスローガンを掲げて経済政策や少子化対策に取り組んでいる日本ですが,定年退職後にも実際に経済活動を行うシニア世代が増えれば,そのスローガンの実現も現実味を帯びてくるでしょう.

 

一昔前に比べて定年退職後の「老後の余生」のあり方・捉えられ方は大きく変化している現在だからこそ,このようなシニア世代による起業は大きな価値があるでしょう.こうしたシニア世代が増えれば,同時に若い世代にとっての刺激にもなりますし,起業した経験を彼らに引き継ぐことも可能です.そして,自身がひとりの「経営者」として経済活動の前線に立つことで,消費の刺激という側面での経済効果も期待できるでしょう.

 

さらに,こうした活動的なシニア世代が増えれば,振り込め詐欺や,悪質な訪問販売などに騙されるお年寄りの数も減るかもしれません(これに関しては前提条件など色々述べなければなりませんが,本筋と大きく逸れるので,希望的観測までに止めておきます).

 

長く仕事を続けてきたからこそ持ち合わせている「忍耐力」や「継続力」もシニア世代の武器の一つでしょうし,そうした力が今後も経済活動に注がれることは非常に魅力的で,今後の日本にとって必要不可欠なものだと言えるのでは無いでしょうか.

*1:

図:起業希望者及び起業家の年齢別構成の推移

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出所:経済産業省資料「中小企業白書2014」