DeNAパレット(WELQなど)の問題から考えるこれからのweb業界

WELQが全記事公開停止に

12月1日にDeNAが運営するキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」の記事が全て非公開になりました。

japanese.engadget.com

 

実は12月1日より前にも、一部の記事に問題が指摘された結果、記事が非公開になるという処置がなされていましたが、医療系記事において薬機法に関わる信頼性の観点や、他のWEBサイトからの出典を明示しない情報の流用などが次々と表面化したため、全記事非公開という措置がなされました。

 

WELQの非公開に続く形で、DeNAが運営するキュレーションメディア(DeNAパレット=JOOY、Find Travelなど)はMERY以外のサイトで全記事非公開という対応がなされることに。

 

その後さらにMERYも全記事非公開になりました。

 

WELQに関して大きな問題点とされていたのは以下のような点です。

①医療、健康に関わる記事が医師の適切な監修を受けていなかった

②他サイトからの適切でない引用(盗用が疑われた)

 

当初WELQにおいて①の問題が大きく取沙汰されたのち、②の問題も表面化し、他のキュレーションメディアも閉鎖という形に。

 

MERYは元々DeNAが買収したメディアで運営体制も違ったため非公開措置はされませんでしたが、その後に同じような問題が提起されて最終的には非公開になりました。

 

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キュレーションメディアの問題点

以上のような経緯を踏まえた上で、昨今急増化する「キュレーションメディア」の問題点について考えてみましょう。

 

日本最大のキュレーションメディアと言えば、みなさんご存知「NAVERまとめ」です。Googleをはじめとする検索エンジンで「ググる」と、色んなキーワードでNAVERまとめのまとめ記事が検索結果上位に上がってきます。

 

NAVERまとめの記事が検索エンジンGoogleアルゴリズム)に評価される要因は、

①1つの記事単位で情報に網羅性がある

②さまざまなキーワード、情報において網羅性があるため、サイト全体でSEO検索エンジン)対策がされている

 

以上の2点が主になります。

 

NAVERまとめは記事の閲覧・アクセス数に応じてインセンティブ報酬も発生するため、キュレーターと呼ばれるユーザーはアクセス数を稼ぐためにニュースや新聞、ツイッターなどから情報をまとめ上げて記事を作成します。

 

その結果、サイト全体も評価されるようになり、NAVERまとめは検索エンジンで非常に強いサイトとして長年君臨し続けています。

 

NAVERまとめの特徴は、ほぼ全ての記事が「引用」という形で他のニュースサイトからの表現をいわば「コピペしただけの記事(もちろん必要な手順は踏んではいるが)」であるにも関わらずそれが検索エンジンに評価されるという点です。

 

つまり、「一次情報よりもそれに関する情報を色んなソースを用いて紹介する記事のほうが評価が高くなる」という結果を生み出しました。

 

でもこれ、ニュースサイトとかにとっては結構な死活問題です。なんと言っても、自分の情報を使ったNAVERまとめの方がPVも多くて広告収入も稼げちゃうわけですから。

 

結果的に一部のニュースサイトはNAVERへの転載を禁止し、引用機能を使えないようにしています(Yahooニュースも一部の発信源は対象)。

 

ここまでが主にNAVERまとめの問題点と考えられる部分を見てきました、次にWELQをはじめとするDeNAのキュレーションメディアの問題点について見ていきます。

 

DeNAが行った徹底的な「SEO対策」

先ほどもSEO対策というワードを使いましたが、これは要するに「検索エンジンに評価されるコンテンツを作る」ということです。Google先生に媚びるとでも言いましょうか。

 

検索エンジンからの流入を増やすことでPV・アクセス数を増やそうという施策ですね。

 

DeNAはWELQをはじめとするキュレーションメディアでこれを徹底的にやりました。

 

サジェストワードや関連して検索される語句を徹底的に分析して「Google先生に気に入られる記事を作る」

 

ということを本気でやったわけですね。サジェストワードやサジェストのサジェスト、さらには何かキーワードを検索したときに検索結果下部に表示される「○○に関連する検索キーワード」のあたりのサジェストを拾いながら、情報の網羅性を高めていったわけです。

 

結果的に一つの記事の文字数も多くなって膨大な文字量になることもあるのですが、そこはさすが大企業のDeNAクラウドワークスやランサーズ、シェフティなどのクラウドソーシングで集めたライターに外注し、それを編集者がチェックして公開するという形で記事を大量生産し、様々なキーワードで検索結果上位に表示されるメディアに仕上げていったのでした。

 

まぁここまで見てくるとそこまで問題も無かったように思えますが、WELQは記事が非公開にされる少し前に「死にたい」というキーワードでSEO対策記事を作成していたことが少し叩かれるように。

 

twitter.com

 

その後、医師の監修が無い医療系の記事が「~だそうです」「~と言われています」といった伝聞形式を用いることで薬機法に触れないようにする指示をライターにしていたという問題点などが指摘され、記事が非公開という形になりました。

 

まぁつまり、色んなKWで1位を取りまくって集客するために記事を量産し、その情報に信頼性が無かったり、情報が間違っていたり、あるいは他のサイトからの情報を出典元を明記せずに「リライト」という形で対処していたのが問題視されたというわけですね。

 

ちなみにWELQでは、1文字0.5円~の値段でライターに書かせていたみたいですね。

 

キーワードは検索ボリュームに比例する形で裁定文字数が指定されており、ライターは先述の「サジェストワード」を見ながら、検索ユーザーが「必要としているであろう情報を網羅した記事」を作成していたわけです。

 

ちなみにアクセス数が多い記事を書く人は文字単価が2円ほどになったり、いっぱい書いた人には数万円のボーナスが付与されたりというような形で「仕事としてのインセンティブ」を確保しながら記事の量産体制を整えていったという感じです。

 

乱立するメディアは淘汰されるか

正直、DeNASEO対策という点では頑張ってやっていたと思います。DeNAパレットとしてWELQなどのメディアを立ち上げたのは2015年の夏ごろでしたが、瞬く間に検索エンジンを席巻しました。

 

ちなみにそれらのメディアの「編集長」には、一時期WEB業界で大きな反感を買った「バイラルメディア」を運営していた方々が担当されていました。

 

netallica.yahoo.co.jp

 

ここに出てくる方がDeNAのキュレーションメディアに携わっていたわけではないのですが、こんな感じで批判を浴びていたメディアの運営者のみなさんがDeNAで仕事していたというわけなんですね。この時点で少し問題アリな気はします。

 

DeNAは上場企業ということもあって今回の問題は非常に大きくなりましたが、同様の問題を抱えるWEBメディアはキュレーションメディア以外にも腐るほどあります。

 

WELQの場合は医療系は医師や看護師や薬剤師、トレーニングならトレーナー、食事のことなら栄養士などなど、専門の人が監修するのが一番ですよね。スキンケア大学などそういった対策をメディアも実際にありますし。

 

もちろんそうなるとコストは莫大に増えてしまうので、その分野でSEO対策をするメディアは今後新規に立ち上がる数が減るかもしれません。

 

そんで、WELQのような「専門家の監修がされていない記事は検索エンジンから消えるのか」と問われると、それも今すぐには難しい気がしますね。アルゴリズムで判断できるところもまだまだ限られている気がするので。

 

いずれにせよ、SEO対策の手法としてのDeNAの施策は良かったと思います。今回の問題を機にWELQは一旦記事を非公開としましたが、今後どのような形でリスタートするのかちょっと気になるところではあります。