海外のプロ投資家が語るHYIP事情

今回はHYIPについて、香港在住のイギリス人トレーダーから聞いた話をご紹介していくことにしよう。彼はアメリカでゴールドマンサックス社に勤務した後、自分で投資会社を立ち上げて株や不動産、為替取引に従事しているその道10年以上のプロである。HYIPなんていうチープなポンジスキームを相手にする暇もないのだろうが、幸いにも話を聞けたのでその内容を共有していく。

 

なお、メールやスカイプでのやり取りは全て英語で行ったが、全て私が訳したのでご了承を。また、彼の発言の内容をまとめているという点についても予めご了承いただきたい(Q→私、A→トレーダー)。

 

  

Q.日本では高利子・高配当をウリにした海外の投資案件がネット上で度々話題になります。こうした投資案件は他の国でも同様に広まっているのでしょうか?(このときRightRise=ライトライズを例に出した)

 

A.まず私はHYIPの専門家ではなく、その実態も詳しくは知らないということを前提に話をすることについて了承もらいたい。しかし、世界中のどんなトレーダーがこうした案件をチェックしても、それらは限りなく100%の確率でスキャム(詐欺)であると言うだろう。もし仮にそれほど高利子の配当が出る投資案件が本当に持続可能ならば、世界中のトレーダーは放っておかないし、そこへ投資をすることは間違いない。

 

しかし、実際にはそうしないし、我々のようなプロフェッショナルに直接投資を勧誘してくるHYIPの運営者はいない。なぜなら、彼らは最初から知識や経験に乏しいビギナーから搾取することを前提に事業を行っているからだ。

 

ここから質問への返答になるが、日本以外の国、例えば私が住む香港でも、こうした高収益を謳ったポンジスキームが疑われる投資案件の情報はFacebookやツイッターなどで出回っているようだ。こうした投資の案件も香港以外の国が行っている事業へのもので、国内の事業への案件はほとんど無い。アメリカや中南米、アフリカ諸国への投資案件が散見される。

 

君からの質問を受けてから、イギリスやアメリカにいる私のトレーダーの友人にも話を聞いてみたが、やはり彼らの国でも自国発の投資案件よりも海外発のものがより高収益を謳っていて人気を集めているようだ。

 

 

Q.HYIPには支払いや投資対象がビットコインであるものが増えているように感じます。それはなぜだと思いますか?

 

A.ビットコインは、我々トレードを生業にするものにとっても注目すべき投資対象であることは事実である。この10年弱でビットコインが遂げた成長には凄まじいものがあり、一攫千金を実現した者も多いだろう。過去には、巨額の資金をこの仮想通貨につぎ込んだものも私の周りにいた。

 

その一方で、現在ビットコインのトレードに力を入れて生計を立てているプロフェッショナルの数は減ってきているように思える。それはやはり、この仮想通貨の値動きには読めない部分が多くあるからだろう。ポートフォリオに入れる投資家は決して少なくないが、リスクヘッジの難しさは投資で利益を出し続けなければいけないトレーダーにとっては看過できないのだ。

 

数年前に、違法薬物の取引を行うWEBサイトが閉鎖したことで、一時的にビットコインの値が落ちたことがある*1。これは、ビットコインがその薬物売買を行うWEBサイトにおいて決済の手段として用いられていたために発生した現象だ。

 

その頃に比べて、ビットコインの認知度が上がり、決済方法の1つとしてビットコインを採用する一般企業も増えている。こうしてビットコインの有用性が認知されたことが値上がりの大きな要因で、同時に一般の人でビットコインを所有する人も増加した。そのことがさらなる値上がりを引き起こしてきたと考えられる。

 

HYIPの運営業者がなぜビットコインを投資先や決済手段として用いているのか、私が判断するならば、やはりドルや円に比べてポンジスキームの運営に都合が良いからだろう。また、ビットコインを運営する案件のポイントや通貨に変換する過程で、何重にも手数料を取れると考えられているからかもしれない。

 

他にもプロのトレーダーならではの見解や、今後のHYIPやビットコインの展望についても尋ねている最中なので、また返信があったタイミングで随時更新していくことにする。

*1:違法薬物の取引を行っていたSilk Roadというサイトが2013年10月に閉鎖した。このサイトでは支払いにビットコインが用いられていた。