仮想通貨詐欺調査の専門家が詐欺の種類や勧誘手口、詐欺コインの特徴をまとめました

 お金につられて罠にかかる人のイラスト(ボロボロ)

 

最近の仮想通貨事情

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みなさんこんにちは、暗号通貨詐欺専門家(自称)のジェシカです。7月31日にNHKクローズアップ現代では、仮想通貨特集が組まれていましたね。ビットコインをはじめとする一般の人の仮想通貨の認知度も確実に上がってきています。

 

さて、そんな中で今なお蔓延るのが仮想通貨関連の詐欺事案。D9クラブ*1はテレ東のWBSで取り上げられましたし、名古屋で行方不明→遺体が発見された50代の女性は、事件に関与していると見られ逮捕された20代の男性と仮想通貨に関連する投資案件を通じて知り合ったとか。

 

巷ではこの2人は「ビットクラブネットワーク*2」で繋がっていたのではと言われています。ただし、ビットクラブそのものはポンジスキームだとしてもまだ配当が続いているし、ビットクラブが直接トラブルの元になったのかはわかりませんが。

 

他には泉忠司氏が「フィリピンの国家プロジェクト!」と誇大広告を行ったノアコイン*3はフィリピン政府から関与を否定されるアナウンスがあるなど、問題点が満載でした。広告・販売を行っていた代理店は、結局返金対応を決定しましたが、出資の際に集まったお金で購入したビットコインの高騰で相当儲けたのではないかとの噂があります(あくまでも噂レベルですが)。

 

それでも、これらの「悪い事案」を通じて仮想通貨が認知されているのもまた事実だと思います。

 

ちなみに、仮想通貨は「暗号通貨」とも呼ばれるのですが、これはビットコインなどの通貨が暗号理論を用いて成り立っていることからついた呼称です。ツイッターに蔓延る暗号通貨に自信ニキたちは「仮想通貨じゃなくて暗号通貨だからwwww」とか言ってるんですが、個人的には別にどっちでも好きな方で呼んだらいいと思います。このエントリーでは基本「仮想通貨」表記でいきます。

 

突然ですが、昨今の仮想通貨ブーム・仮想通貨バブルをわかりやすく整理するために、手始めに以下の画像をご覧ください。

 

BTC/USDの価格推移

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出所:Coinmarketcap

 

こちらはビットコインのドルベースでのチャートになりますが、2017年始めには1000ドル弱だったビットコイン(=1BTC)の価格は、現時点で約3倍になっていることがわかります。

 

もっと過去から見ていくとさらに強烈で、2010年の時点では、10,000BTCがピザ2枚と交換されたという記録があります。当時100ドル分のビットコインを買っていたら、現在では7,500万ドルに相当するとのこと。夢の中の夢といった具合でしょうか。

 

そんな仮想通貨にはビットコイン以外にも様々な種類*4があって、何種類あるのか正確な数字は私もよくわかっていません。実際にそれなりの取引ボリューム(需要)がある通貨でも100種類は優に超えますし、「仮想通貨」の定義も難しいところなので、「たくさんあるんだな」ぐらいの認識で大丈夫です(各通貨で特徴も色々と異なるのですが、ここでの説明は省きます)。

 

さて、仮想通貨に自身ニキのみなさんは、ここからは別に読む価値がないのでお帰り下さい。当たり前のことを書くので。でも、仮想通貨についてあまり知識が無く、「詐欺が多い」と聞くけどどういうこと? という人にとっては読む価値があるかなと思います。

 

 

 

仮想通貨関連の詐欺の種類

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仮想通貨を使った詐欺には、いくつかの種類があります。大まかに分類すると6つに分けられます。

①新規発行通貨購入詐欺

②仮想通貨投資案件詐欺

③情報配信詐欺

④マイニング詐欺(追記)

⑤儲かるツール・アプリ(追記)

フィッシング詐欺(追記)

ざっとこんなところです。ではそれぞれの特徴を解説していく前に、大切なことを確認しておきます。それは「仮想通貨=詐欺」という図式ではないということです。仮想通貨自体は「取引所*5において需要と供給に基いて値段が変動し、株のようにトレードされており、それを日本円やドルといった法定通貨に換えることができます。また、ビットコインを商品代金の決済手段として用いることができるシーンも確実に増えつつあります。

 

仮想通貨そのものが詐欺なのではなく、そのブームに乗じた詐欺的な資金調達を行う団体があったり、仮想通貨を用いた投資商品に詐欺的なものが多いという点を意識してこの先の内容を確認してください。

 

①新規発行通貨購入詐欺(ICO系)

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これは、「確実に詐欺だ!」と言える真っ黒な事例が少ないのですが、黒に限りなく近いグレーな話がよく話題になっています。この類の詐欺は、だいたい以下のように流れます。

 

・「新しい仮想通貨の優先購入権を販売します」というアナウンス。

セミナー、説明会と称した集会で集まった人を、「3年後には価値が確実に10倍になります!」など、嘘ハッタリ満載のセールストークで洗脳し、出資させる。

・お金は集めたものの、そもそもそのプロジェクトが動き出さない。

・新しい仮想通貨とやらは発行されない。お金も返ってこない。発行されても「3年で価値が確実に10倍になる」ようなものではない。ゴミ。

→騙された!!

 

まぁとりあえず、3年後には価値が確実に10倍になります!」みたいな「確実」「絶対」「儲かる」「やらなきゃ損」などのワードを使って勧誘するものは、だいたい詐欺だと覚えておきましょうこれは仮想通貨だけに限りません

 

ただ、私が先に例に挙げたようにビットコインのレートが急上昇していることなどを上手くセールストークに混ぜ込んで、「仮想通貨は儲かるもの」だという意識を刷り込み、あとは老後の不安なんかを煽って高齢者に出資させるパターンが詐欺コインの勧誘の際に多いです。

 

セミナーでセールストークをするのはプロの詐欺師であることも多いので、彼らを信じないこと。「儲け話を聞くときは常に懐疑的たれ」これが鉄則です。

 

例としては、先に名前も挙げた「ノアコイン」や、48ホールディングスによる「クローバーコイン」などがMLM報酬の仕組みを導入して拡散されており、仮想通貨に詳しい人ほどこれらのコインの実態に疑問を抱いているという状況です。一概に詐欺とは言い切れない事案が多いのですが、明らかな誇大広告を行なって半ば騙す形で資金調達をする団体があるという点に注意しましょう。

 

なお、全ての新規仮想通貨発行が詐欺というわけではなく、ICO*6と称して新しいプロジェクトの資金調達の手段として仮想通貨の発行を行うという手法が注目を集めているという側面もあります。ただし、新しい仮想通貨の発行が詐欺か本物かを見極めるのは業界に詳しい人でも難しい部分があるため、ICO安易に手を出すのはオススメできません

 

ガクトコインことスピンドルの問題と殺人事件

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タレントのGackt氏が「大城ガクト」の名義で広報などに携わっていたSPINDLE(スピンドル)も、かねてより問題点を多々指摘され、「詐欺」のレッテルを貼られています。運営母体のドラグーンキャピタル株式会社の代表であった宇田修一氏には金融庁から「業務廃止命令」が出され、日本のオフィスも閉鎖に追い込まれるなど厳しい状況です*7

 

 

 

スピンドルは日本国内での営業と、日本国在住者向けに無許可で営業していた形態に目をつけられて金融庁のお叱りを受けた形で、今後大手の取引所などへの上場も難しくなってしまったことから、価格については下がる一方で、購入した人にとっては「詐欺」だと思われても仕方ないかもしれません。

 

しかし、スピンドルが無認可で営業・販売されていたことはプレセール時点で既に明らかになっていましたし、実質的に「出資」を行うICOの仕組みを踏まえると、その中身を精査せずにガクトのネームバリュだけを見て買うのは元から危険性が高かったと言えるでしょう。

 

他にも、宇田氏が日本人向けにスピンドルを広めるに当たって代理店方式のような方法を用いたのですが、販売の仲介をした者が宇田氏からの報酬を得られず金銭トラブルが発生し、その結果、天野十夢容疑者他4人が逮捕される殺人事件が発生したこともわかっています。また日本の上場企業でもあるオウケイウェイブが手がけたWOWBIT(WWB)という仮想通貨絡みでも殺人事件が発生したことが確認されています。

 

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セミナーや勉強会・オフ会の危険性

仮想通貨・暗号通貨関連のみならず、投資や資産運用に関連するセミナーは基本的に「何か学べる」という場ではなく、主催者が売りたい金融商品などのPRの場になることが多いです。私もとある証券会社のセミナー講師として数回登壇したことがありますが、結局その会社が利用してもらいたいFXのプログラムに関する勧誘目的で開催されたもので、そのプログラム自体が良いとは思えなかったためにその後は講師としての登壇はお断りしたというようなことがありました。

 

仮想通貨に関しても、セミナーや勉強会、オフ会と称して怪しいICOねずみ講まがいのMLMの勧誘が行われることは少なく無いと聞きます。リアルの場で有識者から貴重な情報を聞けることもあるとは思いますが、その開催の目的などをよく考え、美味しい話があっても即決はしないといった慎重な姿勢が騙されないためには重要です。

 

ADA(カルダノ・エイダ)、ノアコインは詐欺なのか

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既に上場していわゆる「億り人」を多数産んだADAという仮想通貨も、「詐欺では無いか」として物議を醸したことがありました。2017年の仮想通貨ブームが本格化する1年ほど前から喫茶店などで地道に出資者を勧誘し、泉忠司氏らMLM界隈の人物が関わっていたことから評判はすこぶる悪く、中々上場せずプロジェクトに関する報告も無かったため、心配する人が多かったようです。

 

当時はICOという言葉自体も一般的では無く、結果的にADAは上場した後に大きく値上がりをしましたが、その後具体的なプロダクトが出て実用化に至るといったフェーズには進んでいません。そもそも独自のブロックチェーンを開発してる時点で詐欺では無いのか、上場すれば詐欺では無いのか、その後の開発で何らかの頓挫があれば詐欺だと言われるのか、日本の刑法基準での「詐欺罪」にはならなくても、「値上がりしない」となれば詐欺のレッテルを貼られるのがオチですので、カルダノADAに関してはかなり頑張っている部類であるとは思っています。

 

一方でADAと同様に泉忠司氏が誇大広告を行って胡散臭さがプンプンしていたノアコインは、現在ICO価格も大きく割り込んでおり、元々ありえないプロジェクトをゴリ押ししていたという背景なども含めて、「ノアコインは上場はしていたけど詐欺だ」という批判が今も多くあります。

 

Withコインの問題

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取引所に上場したものの、詐欺だと言われて止まないコインに松山光一という人物が仕掛けていたWithCoin(ウィズコイン)があります。このコインは、フィリピンのオカダマニラなどのカジノで決済に用いることができるとして宣伝され、ICOのセールが行われていました。

 

しかし、オカダマニラのカジノ側から「ビットコインやその他の仮想通貨が当カジノで利用可能にはならない」というアナウンスがあったり、運営はICO価格を割らないように買い支えを行うと謳っていたものの、突如として発行枚数が大幅に増えて買い支えも行われないなど、あらゆる問題点が相次いで浮き彫りになり、結局「バイナンスに上場は確定」などと言われていたもののそれも実現しないまま、その後も動きも特に見られず、運営を相手取って集団訴訟なども検討されているようです*8

 

ICOの代理店商法の危険性

日本では2018年に入ってから無認可のICOに関する金融庁の監視の目が非常に厳しくなりました。それでもICOをローンチする側にとっては仮想通貨市場のジャパンマネーは見逃せないものであり、日本国内で堂々と営業できないところを代理店商法に切り替えて同じように集金・トークンセールを行うというプロジェクトが増えました

 

具体的にはOKWAVEも関与しているWawooプロジェクトのWOWBIT(WWB)が、シンガポールのWawoo社がセールを行ってオフィシャルでは日本人の注文を受け付けない規約になっていましたが、代理店を通して日本人にも割と広く販売されていました。代理店とは言っても他人にお金を預けることになりますので、当然トークンが購入できていなかったという横領まがいの事例はゼロではありません。

 

こうしたICOの代理店トラブルに関しては私も身を以て体験したことがありますので、後日改めてまとめて記事にしようと思います。

 

 

 

②仮想通貨投資案件詐欺(HYIP、ファンド系)

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こちらは俗に「HYIP(ハイプ)*9」と呼ばれたりします。

 

・「投資ファンド」を自称するWEBサイトのホームページから会員登録を済ませ、仮想通貨で投資金を支払う。

・それらのファンドが提供する投資商品は、毎日数%、1ヶ月で150%など、多額の配当を得られると宣伝されている。

・最初は順調に配当も受け取れていたが、元本を回収する前に突如WEBサイトが閉鎖される。

・お金はもちろん返ってこない。

→騙された!!

 

この詐欺の特徴は、実態もあるのか無いのかわからないような「会社(仮)」が「夢のようなビジネス」を語り、そこに仮想通貨を預けて配当を受け取ろうと思ったけど、利益を得るどころか元本を回収する前にその会社がお金を持ち逃げするというパターンです。

 

そしてこれらの詐欺の多くは多額のMLM報酬を設定し、「紹介者を出せば儲かる」というシステムを導入しています。つまりはねずみ講です。自分が紹介した人が出資すれば、その出資金の一部が自分のボーナスになり、仮に自分は配当ベースではマイナスでもMLM報酬で大きく儲けられる可能性があるということで、ネットワーカーたちの間で大きく広まりました

 

ねずみ講は犯罪です。高額なMLM報酬を設定している投資商品なんてロクなものが無いので近づいてはいけません。こうしたねずみ講の親ねずみたちは、投資先が破綻した場合、投資の失敗は「自己責任」だと強調します。「投資は自己責任」というのは当たり前だとは思いますが、ねずみ講においては「正確な情報の検証をせずに(させずに)誇大広告を行なってカモ集めをしている」という事例が散見されるので、かなり悪質です。

 

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仕手名目で集金するファンドまがいの投資話にも注意

また、未公開株や為替などの金融商品でも過去に似たような事例はありましたが、「仮想通貨で仕手を行うから、お金を預けてくれれば数ヶ月後に元本を2倍にして返す」といった投資話で数十億円規模を集めているグループが実際に存在します。その実態はポンジスキームであるため配当遅延などからトラブルが表面化し始めているようですが、こうした「人にお金を預ける・貸す」という行為がそもそもトラブルを生じさせる原因になってしまうため、十分注意しましょう。

 

下掲記事では、リップルXRP)の仕手を名目にファンドまがい商法で相当額を集めた件について報じています。

 

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SENER(セナー)では国内で代理店営業を行なっていた人物が逮捕

高配当を謳って仮想通貨での出資を募っていた「SENER(セナー)」という海外のファンドのような会社がありました。その会社に出資する名目で代理店の営業活動を行なっていた柴田千成(しばたかずなり)という人物は、逮捕・起訴された後に書類送検を受けました。

 

この件では、無登録のファンド勧誘業務を「現金」で行なっていたことが決め手となったとのことですが、今後は仮想通貨に関してもきちんと法整備を行う準備が政府関係者の間で進められているとのこと*10

 

③情報配信詐欺(有料グループ・サロン系

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これも昔からあるスタイルですね。「有益な情報を流す」と謳って、ネットで拾い集めた情報や、根拠も何もないような適当な情報を流すだけなのに「登録料」「入会料金」を要求してくるパターンです。これに引っかかるのはだいたい「他人任せで自分の頭で考えることを放棄して楽して儲けたい」と考えてしまう人なので、引っかかってしまうのも自然の摂理かな。

 

支払いを仮想通貨で受け付けることで、特商法に引っかからないようにマーケティングする事例が増えているというのも、また面倒なところですね。本当に有益な情報商材も極稀にありますが、まずは自分でググって自分の頭で考えるということを意識しないと、このタイプの詐欺に引っかかってしまいます

 

最近は「有料サロン」と称してインフルエンサーによるクローズドな有料コミュニティがいくつも乱立されていますが、特に投資やトレードといったリアルタイムでの情報配信に価値を持たせてお金を取るという形は、短期的な結果が求められるため、結果が出ないとすぐに詐欺のレッテルを貼られてしまう可能性があります。

 

また、どんなに良い情報を流しているグループでも、全員がその真意を汲み取って行動できるわけではなく、多少知識のある人からすれば常識的なリスクヘッジができていないというようなことはよくあります。

 

どんなにすごい投資家も、その手法を全て手取り足取り全員に教える余力はありません。書籍などの形に残るコンテンツではなく、情報のスピードと再現性を金銭と交換する有料サロンは、運営者にも参加者にもそれぞれリスクが伴うと個人的には思います。

 

 

 

④マイニング機材(ASIC・GPU)販売、運用代行

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仮想通貨の高騰と同時に注目を集めた投資に「マイニング」があります。マイニングの詳しい仕組みなどの説明はここでは省きますが、ビットコインなどの仮想通貨は常に新たに発行され続け、その新たに発行されるコインを手に入れるための方法がマイニングで、そのためにASIC(エーシック)やGPU(グラフィックボード)と呼ばれる機械が用いられます。

 

高性能の最新マイニング機器は品薄になることも多く、それの輸入代行などを名目に集金を行い、最終的に機材は手元に届かない。

 

こういった事例が国内外を問わず数多く報告されています。冒頭でちらっと名前を挙げた「ビットクラブ」に関しても自転車操業的なポンジスキームで今後破綻するのでは無いかという指摘は多くありますし、同じくクラウドマイニング大手の「ジェネシスマイニング」も、2018年に入ってから配当が止まるなどの事例が報告されています。

 

⑤儲かるツール・アプリ(自動売買、アービトラージなど)

「これを使えばノーリスクで月利10パーセント」などと謳って配信される自動売買ツールやアービトラージ系の商材にも注意が必要です。これは③の項目で上げた商材やサロンなどと絡めて仕掛けられることが多いのですが、市場規模が小さくボラティリティも極めて大きい仮想通貨では自動売買やアービトラージのロジックが突然機能しなくなるケースも少なくありません。

 

いわゆるBOTやEAといった自動売買系の商材や、鞘取りで儲ける裁定取引アービトラージ)のツールは、「どんなに儲かる(期待値のある)ロジックや、かつて儲けられたロジックでも今後同じパフォーマンスが継続できるかどうかはわからない」という点には十分注意しなければなりません。

 

そもそも儲からない粗悪なツールが「最新のAIを搭載〜〜〜」などと宣伝されているケースは少なくありませんが、市場に生じている価格の歪み・エッジの部分で鞘取りをするロジックを採用している場合は回線環境も含めていかに他の少ないパイを拾ってかき集めるかが利益に直結するため、運営の誇大広告を鵜呑みにすると「騙された」と感じてしまう人がこれからも多く出てくると思います。

 

普通に考えて、素人が放置しておいても本当に儲かるツールは、一般人の手元には巡ってきません。

 

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フィッシング詐欺

仮想通貨の取引所には、日本の法律に準拠して金融庁・財務局の許可を受けた取引所以外に、海外に拠点を置く海外取引所があります。海外取引所は日本人向けの営業は禁止されていますが、実際にはアルトコインを取引する際には海外の取引所を使っている人が多いのも事実です*11

 

そして、これらの海外取引所に見た目はそっくりなフィッシングサイトを作り、そこにログインしようとするとパスワードや二段階認証の認証番号が抜き取られて本当のアカウントに第三者がログインし、資金を外部に送金され盗難されるというような被害が相次いで起こったことがあります*12

 

海外取引所以外にも、MyEther Walletというブラウザから利用できるイーサリアムのウォレットを模したフィッシングサイトなどが広まって被害が拡散した例もあります。こうした被害を防ぐためには、常に注意して本当のサイトをお気に入りに登録しておくなどの対策しか有効なものはありません。

 

最近になって、2018年1月に起こったコインチェックのハッキング被害は北朝鮮ハッカーグループによるものである可能性が高いという発表がありましたが、こうした仮想通貨詐欺には国際的な犯罪集団が関与しているケースも多く、手口も緻密化しています*13

 

2019年には資金決済法から金商法の適用範囲に

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ICOでの詐欺的な資金調達が横行していることを重く受け止め、日本政府としても仮想通貨に金融商品取引法を適用して規制を強化しようという動きが着々と進んでいます。

報告書案は、ICOの性質に応じた規制の必要性を明記。トークンの保有者が投資先の事業の収益から分配を受けるなど投資の側面が強い場合には、金商法の開示規制を適用し、第三者が発行者の事業や財務状況を審査する枠組みを構築することが適当だとした。

 

他方、トークンがモノやサービスを受ける権利を表す場合は、トークンを仮想通貨と同視し、資金決済法を適用する。

 

投資に当たるトークンを販売する業者は、第一種金融商品取引業者と同様に整理する必要があると指摘。第一種金商業者は一般的な証券会社が該当し、登録制が取られている。利用者保護の観点から、勧誘も制限し、一般投資家への流通を抑止する。

 

仮想通貨の規制強化へ、資金調達の開示義務など=金融庁・報告書案 | ロイター

具体的には、ICOを行う発行者に対して財務状況の開示を請求できたり、トークンの販売や勧誘に関して制限を行うことが検討されているようです。2019年の通常国会で成立を目指しており、こうした関連法案の整備も詐欺撲滅のためには必要不可欠な動きです。

 

ただし、あくまでも消費者側が疑う姿勢を持って怪しい仮想通貨にお金を投じないようにしなければ、詐欺被害がゼロになることはないでしょう。

 

詐欺師の手口は昔から変わっていない

これをここまで読んでいただいた方は、仮想通貨の詐欺に引っかかる確率は劇的に低くなると思います。しかし、今回はこうした詐欺・ねずみ講の商材がたまたま「仮想通貨」だったというだけで、過去には「新規公開株」で同じようなスキームが流行って多くの被害者が出ましたし、こうした詐欺を仕掛ける輩がゼロになることは無いでしょう。

 

したがって、「仮想通貨は詐欺も多いから気をつけよう」という認識ではなく、巷には詐欺が蔓延していると注意の意識を持つのがおよそ適当だと私は思います。(現時点において)詐欺師にとって「仮想通貨」はただただ騙しやすい「商材」なだけで、詐欺やねずみ講への勧誘の手口やスキームといった「手段」は昔からずっと変わっていません。人の弱みにつけこんで、不安を煽って、誇大広告で盛って、金を捲き上げる。この仕組みそのものに注意する必要があるのです。

 

お金がどこに行って、どう回って、その結果どうなるのか。自分の頭で考える力がない人は、例え仮想通貨の詐欺には引っかからなくても、商材が変われば騙されてしまう可能性が高いです。

 

もし「これは詐欺なんじゃないのかな」と思ったら、その組織は誰が運営しているのか、本当に実態はあるのか、その事業は持続可能かなど、根本的な部分をしっかり考えるようにしてください。「ただ貯金をするよりも資産運用をした方が良い」という考え方は至極まっとうですが、為替や株の仕組みや金融商品についての知識もロクにないのに、誰かの上手い話に乗っかるのは本当に危険です。

 

「この話は詐欺じゃないか」というものに勧誘を受けたりした場合は、LINEやメールで相談してください。検証できる範囲で検証してお答えします。もちろんその前に「自分の頭で考える=ググる」ぐらいのことはしてみてください。

 

 

 

詐欺に引っかかってしまったら誰に相談するべき?

ここまで読んでみて「自分の参加した仮想通貨のプレセールや、仮想通貨の投資が詐欺かもしれない」と思った人は、弁護士や消費者センターに相談しましょう……と言いたいところなのですが、かれらも仮想通貨詐欺の専門家ではないので、実態をよく把握していないところがあり、必ずしも適切なアドバイスを得られるとは限りません。

 

ただし、D9クラブの件で弁護団を結成したあおい法律事務所さんなどは投資詐欺に詳しく、適切なアドバイスが得られるかと思いますので、そうした機関に相談するときは、できるだけ詳しいところを頼るのが良いと思います。警察もアテになりません(笑)

 

詐欺かな? と思ったらまずは2ちゃんねるなどで情報を調べてみるのが良いと思います。だいたいの詐欺はすぐに2ちゃんねるに広まりますので。その後、どこに問題点があるのかを精査した上で消費者センターや弁護士に話を持ち込むのが適当です。

 

ちなみに、自分もHYIPに関して法律などを調べていたときに弁護士や金融庁消費者庁関係者と話をする機会があったので、どこに相談したら良いかわからないという人は連絡していただければ最適な窓口を提案できると思います。

 

仮想通貨詐欺の相談で警察と話した感想

現在係争中の内容に関係するためざっくりとしたことしか書けないのですが、仮想通貨詐欺に関して警察と話した感想を率直に書きます。京都府警や神奈川県警など仮想通貨関連の犯罪捜査に力を入れている管轄の担当刑事を除いて、多くの警察官は仮想通貨に関しては素人同然の知識しか持ち合わせていません

 

これは仕方ないことではありますが、検察や弁護士といった司法試験をクリアした「法の専門家」でさえ、新しい価値の概念である仮想通貨や改正された資金決済法について深く理解している人は少ないのが現状です。

 

ある仮想通貨詐欺事件に関して証拠の提供のために警察署に出向いても、「仮想通貨とは、仮想通貨の値段はどうやって決まるのか、仮想通貨の取引所とは」など、事件の本題からそれる前提知識を担当が変わる度に説明する必要があり、なかなか事件解決のために動いてもらえませんでした。

 

今後専門的な知識をつけた方がそうした職について詐欺被害者のために尽力してくれるようになることを願いますが、現状は数億円規模の大規模な事件でなければ、仮想通貨関連の詐欺被害に関して警察が刑事事件として動いてくれるケースは出てこないように思います。そもそも仮想通貨に限らず詐欺での立件自体が難しいという部分もありますが。

 

参考になったと思う方は、ぜひTwitterFacebookなどでシェアをお願いします! 

*1:ブラジルの「投資会社」を自称する団体(企業)で、日本からも著名なネットワークビジネスの代理店が拡散したため、多くの人が参加した。先日、突如配当が停止し、勧誘の際の説明にあたって違法性があったのではないかとして、被害者の会・弁護団も結成されている。
参考:逮捕者が出るか?D9クラブの詐欺事件に関して情報を整理してみた

*2:仮想通貨の「マイニング」を通じて配当を得るというスタイルのMLM。マイニング実施地はアイスランドで、日本からの参加者も多い。実際のマイニング状況と会員数、配当額を照らし合わせると、ポンジスキーム(新規会員の出資金が以前からのメンバーの配当に充てられて、あたかも運用が成功しているかのように見える仕組み)であるという指摘が多い。

*3:「フィリピン政府公認」を謳って「日本円をノアコインにしておくだけで誰でも億万長者になれる」という宣伝文句でプレセールを行っていた。先日、返金を希望する者には全額返金対応を決定。

*4:ビットコイン以外の仮想通貨はビットコインの「代替通貨」の意味合いを込めて「アルトコイン」と呼ばれる。イーサリアムリップルライトコインなどが有名。

*5:国内の取引所では、ビットフライヤーコインチェックなどがある。

*6:新規公開株(IPO)になぞらえた造語で"Initial Coin Offering"の略語。成功して取引所に上場した後、価格が高騰してプレセール時の数十倍といった高値をつけるケースもある。

*7:参考:宇田修一に対する行政処分について:財務省関東財務局

*8:参考:withコイン松山氏に関する集団訴訟|集団訴訟ポータルサイトのenjin

*9:"High Yield Investment Program"=「高収益投資プログラム」の略語。日利1%以上など、通常ではありえない利率を宣伝材料に人気を集めたが、実際はねずみ講である場合がほとんど。MLM報酬目当てにSNSやWEBサイトを通じて拡散されたため、被害者も多数出ている。現在は徐々に下火になりつつある。

*10:参考:セナー83億円事件 違法な金受け取りで男を書類送検

*11:日本人の利用者が多い海外取引所にはBinance、Bitfinex、Bitmexなどがある。

*12:三者に勝手にログインされて資金が外部に送金されるという事例はコインチェックなど日本の取引所でも発生したことはある。

*13:他には、ビットコインイーサリアムのアドレスをコピーしてからペーストする際に、送金先のアドレスをハッカーグループのウォレットのものに書き換えるウイルスが広まったという例もあった。