仮想通貨と世界経済(らくがき)

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※らくがきですが、批判その他意見などある方はぜひお願いします。ビットコイン≒仮想通貨で曖昧なところがあります。ご了承をば。

 

ビットコイン(仮想通貨)を支持する人々が掲げたビットコインの強みの1つとして、「中央集権からの脱却」というものがある。ビットコインにより中央銀行、そして政府による金融・財政政策から逃れたところでP2P経済が成り立つという主張である。

 

ブロックチェーン技術を用いたビットコインのネットワーク上で管理される資産(データ)は、言わば相互監視の状態にある。他人の監視の目があるからこそ安全で、その仕組みの上で確実な取引も保証されているという状態だ。

 

ビットコインを始めとする仮想通貨技術の発展は、確実に世界の金融を現在進行形で変化させている。ビットコインは2011年の運用開始から6年ほど経過し、そこから今日に至るまでの表面的な時価総額の増大が見逃せないことはもちろん、当初から期待されていた代替通貨としての役割を既に超越した印象さえ受ける。

 

ビットコインはもはや「手数料が安くて、送金から着金までにかかる時間も極めて短い画期的な通貨」という導入当初の「あくまでも便利な通貨」としての位置づけとは大きく異なる次元で機能していると表現しても差し支えないだろう。特に、直近の1年ほどで、ビットコインは(これまで仮想通貨に触れてこなかった層に対しても)投資・投機の対象としての存在感を極めて大きいものにした。

 

法定通貨に対してのレートは急激な右肩上がりの線を描き、反落の後にもさらなる急上昇を見せてきたことから、キャピタルゲインを得るための金融商品に近い位置づけで所有する人の数も大幅に増えた。また、ビットコイン以外の仮想通貨(アルトコイン・オルトコイン)も徐々に存在が広く知られるようになり、1日で2倍以上、数ヶ月で10倍といった急激な値上がりを見せるアルトコインも少なくない。

 

こうしてアルトコインも注目されて需要が増大し、取引量も増える中で、ビットコインはさらに新たな役割を担うことになる。それは、全ての仮想通貨に対しての基軸通貨というポジションだ。ほぼ全てのアルトコインは、実質的に各法定通貨に対する交換レートを有しているのではなく、対ビットコイン(BTC)基準での需給関係に基づく取引価格があり、それをドル・ユーロ・円といった各通貨と照らし合わせた価格で取引・販売(価値=評価額判断)が行われているという状況である(もちろんBTC⇄アルトコインの取引もあり)。

 

つまり、ビットコインへの投資がさらにアルトコインへの投資を産んでいる状況が、現在の仮想通貨市場拡大の動きに拍車をかけていると言って良いだろう。

 

ここまでの内容を整理する形にはなるが、ビットコインには大まかに分けて

①代替通貨としての需要
②(価格の上昇が見込める)投資・投機先としての需要
③アルトコインを購入するための需要

という3つの種類の需要があるというのが私の主張だ。そして、現在の需要バランスは、このまま行けばあるところでビットコインのシステムそのものを揺るがしかねない複数の重大な問題を生じさせるのでは無いかということも同時に考えてしまう。

 

さて、ここからは現在そして今後の仮想通貨市場に対する私の危惧を記させていただくことにする。

 

まず第一に生じる問題は、代替通貨としての需要が不安定なものになるのではないかというものである。この問題は、仮想通貨のレートが激しく変化する局面においては度々生じるのではないだろうか。例えば、ビットコインが「数日、あるいは数時間後に価値が増えるかもしれない」という値動きを見せている状況では、日本円やドルの代わりとして決済手段に用いる需要は少なくなるだろうという予測である。

 

これに関しては、代替通貨としての需要が一時的に減少したとしても、価格変動が生じている=その他の需要によって取引量自体は落ちていない→危惧するほどのものでもないという見方もできなくはないが、この見方はすなわち、本来第一の目的であったはずの送金時間の短縮や手数料抑制など、ビットコインが経済活動に貢献し得る優位性が活かし切れない状況が生まれてしまうというものにもなる。

 

さらに考えられるのは、局地リスクを全体共有せざるを得ないというものである。マウントゴックス事件と同じような形で、もしどこかの取引所が破綻したら、ビットコインの価格はどうなるであろうか。あるいは、来る2017年8月1日、本当にビットコインのハードフォークの決行が発表され、市場ではパニック売りが続出し、価格が一向に戻らない場合はどうだろうか。

 

実際上記のようなハプニングでレートの急落が生じるか否かという議論はここでは置いておくが、何らかの要因によりビットコインのレートが急落した場合には(今後市場規模が拡大すれば)、世界同時株安と同様に、世界経済全体に強い悪影響をもたらす可能性も高いと予測できる。

 

世界全体で仮想通貨による決済が広く用いられるようになれば、その分だけ一箇所に生じた問題がネットワーク全体に与えるリスクが高まるという危険を孕んでいる(ここではブロックチェーン技術の安全性等ではなく、市場には心理的な要因も大きく影響することのリスクを主に想定している)。

 

この際には、ビットコインのコンセプトでもある「中央集権からの脱却」が大きなリスクになる格好だ。同一ネットワーク内における金融リスクが通貨レートに与える影響と伝播する範囲に関して、我々は既にギリシャの破綻によるユーロ安およびEUの諸問題という形で実際に目の当たりにしているわけで、仮想通貨ではそんなことなど起こり得まいと楽観視することは決してできないだろう。

 

「中央集権でない」という点は、ビットコインやその他のアルトコインの優位点として挙げられることも多いが、裏を返せばどこまでも市場心理に忠実な値動きをするということと同義である。そして、その通貨の価値変動を生み出すのも、取引を行う者の行動である。

 

世界のどこでも使えるワールドスタンダードな仮想通貨が普及するということは、世界全体で金融リスクを共有するということなのかもしれない。